8月4日(金)晴後曇
立山、剣へ向かう者と一緒で電車は超満員。小見発折立行きのバスは全員座席制ではなく、1時間半立ちん棒。終点の休憩所で水を満たして出発。
道は狭く木の茂みとやぶで、見通し風通し共に悪い。急登。始めのうちはずっと一列の行列で、伊吹の登り口を思わす。非常に暑く苦しい登りであるが、一時間余りで三角点に着き、急に低木帯となり見通しはよくなる。朝と昼を兼ねた食事。ノドばかりかわいて食欲は出ず。
前方は今までとうって変わってなだらかな斜面の草原が延々と続き、左手のずっと前方には薬師岳がそびえている。ここからは楽なコースで、ふり返れば有峰湖がいつまでも眼下に青いかげをうつしている。ニッコウキスゲの群落。草原のところどころ急な斜面のコースは伊吹の三合目あたりと似ているが、標高が高いだけに日が照ってもあまり暑さを感じない。
やがて池塘が点在するようになるが、水は涸れて無い。コバイケイソウも目につく。このあたりからガスがかかりだし、小屋が見えたり隠れたりするうち、やがて急に目の前にガスの中からうかび上がってくる。
薬師は一面ガスに覆われ、とても行く気になれない。時間も早く歩き足りない感じで小屋の外でウロウロしていると、走ってくるガスにつつまれ寒い。ヤッケをかぶりコーヒーを沸かして飲む。このあたりハイマツとコバイケイソウ。東の方は常に日が照っており、明日のコース、薬師沢、黒部源流の谷の向こうに雲ノ平の西側、急斜面が見える。その右手は黒部五郎。はるか東方に大きく高くそびえるノコギリは水晶か。
夕方になって一瞬ガスが晴れ、薬師の大きな山容が現れる。
8月5日(土)晴後曇
快晴。5時に起床。小屋のすぐ南のところで尾根道とわかれ、太郎山を巻くようにしながら谷を下る。石ころだらけの急斜面で、種池新道を思わせる。最初の沢に着いて、そこを越すと以後は比較的なだらかなコースとなり、小さな沢を何回も渡る。
カベッケが原から急な道を黒部源流まで下り、薬師沢小屋の前から吊橋で右岸に渡る。一服後、高天ケ原へ向かう道を左に見送り、はしご階段の急斜面を上る。見通しは全くきかない。しかし日が当たらないだけ助かる。
空が次第に大きく見えるようになるに従い、道もなだらかになり、やがて明るい台地に出る。シラビソ、ハイマツのアラスカ庭園。目の前の樹林帯をもう一つ越すと、ハイマツと池塘の奥日本庭園。ここからは薬師、黒部五郎、笠、三俣、槍、水晶、赤牛、と360度の展望。池塘に水の無いのが惜しい。
祖母岳の横を通り、雲ノ平山荘につく。ここまでは意外に人が少ない。小屋も昨夜はよく空いていたらしい。メシにはまだ早いので、黒部源流でメシを食う予定にして出発。時間があるのでスイス庭園を通る。目前にビョウブのように水晶が立ちはだかる。この山にもぜひ登ってみたい。
チングルマの群落をすぎると非常に歩きにくいハイマツ中の道。腰をかがめ、首を曲げ、ザックを引っかけ時間を食う。ここをすぎると祖父岳の巻き道。このあたりも水の涸れた池塘が点々とあり、気持ちのいいところ。
やがて雪渓のある河原で、踏み跡は真っ直ぐついているのでそのまま歩いて行くとだんだん細くなり、やがてあるか無いかわからぬほどの踏み跡。だいぶ下ったところで河原につき当たり、踏み跡もない。方角を確かめると東または南に向かうはずが西を向いている。おかしいので先ほどのところまで引き返すことにする。
しかし一面のハイマツの中、ゆるい斜面で、今通ってきたところもはっきりしない。人影は全く見えず、オーイと言っても何の返事もない。ガムシャラに上がってやっと見覚えのあるところ。少し引き返して雪渓のある河原に戻る。ルートはどうやらここを横断しているらしい。この間約一時間。肉体的、心理的共に非常に疲れる。雲ノ平玄関で、谷をへだてた目の前に三俣小屋を望みつつ昼飯。
一気に源流まで下りコーヒーを沸かして休憩後、三俣小屋でまた休憩。雲行きがあやしく、少しばかりポツポツ来たので急いで出発。ここからの登りがまたかなり厳しくこたえる。続いてのんびりした下りになるがこの道が予想外に長く山ひだを登ったり下ったり。急なハイマツの道を足腰痛めながらやっとおり切ったところに双六小屋。肩がはれあがって非常に痛い。サロンパスのお世話になる。双六池まで行く元気もなし。